本家こじまは三代目の私で九十有余年がたちます。先代が伝承してきた昔からの技法で今もつけてます。近代化が進むとええ機械や、ええ調味液が出てきます。便利で楽やし、量産もできるし、そうしたほうがええんかもしれまへん。そやけど思い出してみなはれ。お母ちゃんが糠床から出して切ってくれたあの漬物の味はやっぱり手作りやないと出せまへん。こじまの歴史が培った技術と今の技術をうまいこと融合させて手作りにこだわって、お客さんに喜んでもらえるように日々努力しておます。
最近は外国からも安うて、ええ材料が入ってきよります。そやけどやっぱり京漬物は少々値段が高こうても日本産(特に京都産)を使うようにしてます。素材が本来持っている旨さに醗酵の旨さを加えてこそ、ほんまにうまい漬物ができると思うんどす。また漬物の種類によって野菜の産地を変えるのも”おいしい”と言うてもらう大事なポイントやさかい、努力は怠らんようにしてます。
変な話やけど怒りながら作らはった料理て、なんかおいしくない様な気がしますんや。漬物もいっしょでお客さんに”おいしい”て言うてもらおうと一生懸命つけるとやっぱり味が違うような気がします。真心をつけ込むのも大切な味付けの一つやと思うてます。
千枚漬て言うたら京都の代表的な漬物です。京都ならでわの真白な大きなかぶらを丸のまま薄切りにして塩づけしたあと、たっぷりの昆布を薄切りかぶらの間に丁寧に挟み込み、味醂でつけ込んだ京都らしい極上の味がします。 上品な漬物だけに素材の善し悪しが味に影響します。厳選された聖護院かぶらを使うことはもとより、昆布も利尻の一等級をふんだんに使用し、味醂も自然のものを使い、味にうるさい方にも納得していただける千枚漬作りに励んでます。
しば漬言うたら洛北は大原の里で有名なおつけものどす。最近、外国産の乾燥野菜に調味液をしみ込ませたものが、安く出回っていますが、八瀬大原特産のしその葉と塩のみで厳選野菜を乳酸発酵させた、昔から伝わる本来の味を是非ともご賞味いただければ幸いです。生のしば漬はこんな味だったのかと思われるかもしれません。
梅の名所で有名な京都は青谷の大梅を、紅じその塩もみと共につけ込み、三日三夜の土用干しの後、じっくりとつけ込んだ肉多く大粒の梅干しです。この梅は”紅がえし”と言いまして外見より中身の方が赤い高級な梅です。高級百貨店では外商サロンなんかに展示されて何万円の値がつく梅やさかいに焼酎の梅割なんかに使ったらもったいない。けど、この梅の梅割を飲んだら他のは飲めへんなぁ。
京都伏見は古くからの酒処どす。今も伏見高瀬川の水面に酒蔵の白壁がきれいに映りよる。その伏見女酒の酒粕に、桂うり・きゅうり・すいかをつけ込んだものが酒粕漬です。うちは五回に渡るつけ返しをしてます。(ふつうは三回くらいのつけ返しでよろしいんやけど)そのほうが、香り高く、まったりとした京の歴史を感じさせる風味になるからなんですわ。